花 影  26
















 丘の上を見上げていた千明と流ノ介。
 丈瑠がアヤカシ本体の傍に行ったきり、丘の下からは見えなくなって、数分が経っていた。

「流ノ介」
 千明が、たまらずに叫んだ。
「俺、やっぱ丈瑠の加勢するわ」
 そう言ってショドウフォンを取り出す千明。
「待て!!」
 それを流ノ介が止める。それに千明が怒鳴った。
「丈瑠、ここから見てもふらふらだったじゃんか。丈瑠に何かあったら、どーすんだよ!!」
 千明が数歩前に出て、空中に文字を書こうとする。それを流ノ介の腕が遮った。
「あ!?おい!何すんだよ!!」
 叫ぶ千明から、流ノ介はショドウフォンを取り上げた。そして、千明を見つめる。
「殿が我々に協力を求めるまで、行っては駄目だ」
 千明が怪訝な顔をする。
「何だよ?お前、朝飯の席で、言ってたじゃないかよ!丈瑠が認めていなくても、一緒に闘うって!!」
「ああ。あの時はそう言った」
「じゃあ、何で!?」
 問い詰めてくる千明に、流ノ介は瞬間、迷う。
 これは、今思いついたばかりのことだ。これで上手くことが運ぶかどうかはわからない。しかし、他に何も思いつかないのだ。
 流ノ介は、仕方なく答えた。
「向こうから、求めて頂くんだ」
「え?」
 千明の顔が不信感でいっぱいになる。それを見ながら、流ノ介は苦悶の表情で、先ほどから考えていたことを告げた。
「殿に………あちらから、仰って頂く。それしかない」

 今の、誰も見えていない丈瑠に、自分たちを認めさせる方法。
 それは、これしかないのではないだろうか。丈瑠の中に唯一存在する『外道衆との闘い』で、どうにもならなくなって、侍たちの必要性を、丈瑠が身に沁みるしか、ないのではないだろうか。
 こんなことを丈瑠にさせるのは、流ノ介にとっては非常に不本意だった。しかし今の流ノ介には、こんな方法しか思いつかない。

 暫く眉を寄せて考えていた千明だが、流ノ介の言いたいことを理解したようだった。
「………そういうことか」
 理解はしたが、その内容が気に入らなかったようで、千明は流ノ介を睨む。
「丈瑠だけじゃ勝てない。俺たちが必要だ。だから一緒に闘って下さいって………丈瑠に言わせるって意味かよ?」
 千明のわざとらしい言葉に、流ノ介は視線を逸らした。
「おい!マジで、丈瑠にそう言わすつもりかよ!?」
「そこまで仰って頂くつもりはない。ただ殿が、せめて私たちの存在を思い出してくれれば………」
 そう。ほんの少しでもいいから。
 流ノ介は唇を噛みしめる。
「せめて、こちらを………一目でもいいから見て下されば………」
 俯いて呟く流ノ介を、千明にしては珍しく、冷たい目で見下ろす。
「千明、だから今行くのは………」
「無理だろ!」
 顔を上げた流ノ介に、千明が断定する。
「え!?」
 目を見開く流ノ介。千明は流ノ介を嘲るような目で見た。
「無理だっつーの!丈瑠はそういうこと言わねーよ」
 千明はそれだけ言うと、流ノ介の前に手のひらを出した。ショドウフォンを返せと言うのだ。流ノ介は千明のショドウフォンを握りしめたまま、唇を噛みしめる。
「千明。それは私も判っている。でも………」
「無理だって、言ってんだろ!!」
 流ノ介の言い分を、千明は頭から否定する。
「丈瑠は、本当に俺たちなんか、眼中にないんだ。あっちから助けを求めるようなこと、絶対にないね」
 千明の意見ももっともだと、流ノ介は思っている。だからこそ、こんなことになっているのだから。
「………確かに、殿の性格から考えるとそうなる。しかし、こんな状況にまでなっているのだから………」
 言わないはずがない。それでなければ、命が危ない。だから丈瑠は、必ず助けを求めて来るはず。それがアイコンタクト程度のものであろうとも。とにかく丈瑠が、丈瑠以外の存在を思い出してくれれば、それでいいのだ。
 しかし、千明はそれにも首を振った。
「それでも、あいつは言わないよ」
「そんな馬鹿な!」
 このような切羽詰まった状況で、言わないなどとは、流ノ介の思考回路では考えられない。普通に考えれば、これだけ形勢が不利なのだから、すぐ近くにいる侍たちに助けを求めるのは当り前だ。自分たちも、そのためにここに待機しているのだから。
 しかし千明は、顔を歪めて叫んだ。
「だから、昨日から、さんざん言ってんだろ!!」
 それと同時に、流ノ介の手から、自分のショドウフォンを取り返す。
「あっ」
 再び千明からショドウフォンを奪おうとした流ノ介は
「あいつは、馬鹿殿だっつーの!!」
 千明のその言葉に、動きが止まった。
「え………」
 ショドウフォンを開きながら、千明も唇を噛む。
「状況がどうだろうと、今のあいつは、死んでも自分からは助けなんか求めない!ショドウフォン!一筆奏上!!」
 言いながら、空中に「木」の文字を書いた。
「この場合、誇張じゃなくて、本当に死んでもあいつは言わないだろうからな。そこが丈瑠の始末が悪いところなんだよ。それくらい判れよ!!はーっ」
 千明は文字を裏返して、シンケングリーンに変身した。そして後ろを振り返る。流ノ介と目があったが、流ノ介は呆然としていた。
「お前も、何時までも意地はってんじゃねえよ!そうしないと大事な殿さまが、本当に死んじまうぜ!?」
 シンケングリーンは不満そうに鼻を鳴らすと、そのまま丘に向かって駆け出した。
「今のあいつを変えないと、駄目なんだよ!あの馬鹿さ加減を変えないとな!!」
 走りながら、流ノ介に叫ぶ。

 決然とした態度の千明。千明は千明で、丈瑠のことを深く思い、観察しているのだろう。  丘の下から、千明の背中を見送る流ノ介。
「殿………しかし………それでは、私は………」
 どうしていいかわからなくなり、流ノ介は、ただ拳を握りしめた。






 シンケングリーンが丘を登ろうとした時だった。
「獅子折神!折神大変化!!」
 丘の上から、丈瑠の声が聞こえた。
「え?」
 シンケングリーンが上を見上げると、丘の上に巨大な獅子折神が出現する。
「………あれ?」
 シンケングリーンは拍子抜けした。
 先ほどまでのシンケンレッドは、どうみても、体力もモヂカラも使い果たしていた。スーツに隠れてしまっているのでわからないが、あちこちを怪我してもいただろう。とても、折神大変化ができるような状態には見えなかった。
「何だ、大丈夫だったのかよ?」
 シンケングリーンは首を傾げた。しかし、折神大変化で闘えるのならば、むしろシンケングリーンは、ここから離れているべきだ。そうでないと折神の攻撃がやりにくいだろう。シンケングリーンはすぐに方向転換をした。
 再び、流ノ介の方に戻り始めたシンケングリーンは、そこでふと立ち止まった。
「丈瑠………獅子折神になったってことは、やっぱり、あのアヤカシを、五角大火炎でぶっとばしちまうんだろうなあ」
 丘の上を再び見上げると、先ほどまで静かだったアヤカシが、また枝や触手を激しく動かし始めていた。獅子折神は、丁度、空に飛び上がったところだ。
「アヤカシが、あれじゃあなあ。折神でなけりゃ、確かに無理だ」
 シンケングリーンはため息をつく。

 それから、とぼとぼと流ノ介が立っている方向に歩き出した。
 そして気付く。かつて小道だった場所。シンケンレッドが焦土としてしまい、その後、シンケンブルーとシンケングリーンでそこら中を地割れだらけにしてしまった、もう一般人が歩けそうもない道。その突き当りに、寺院の門が見えた。
 そこに、黒子が六人立っていた。丈瑠の付き添いと、先ほど流ノ介と千明に付き添ってきた黒子たちだ。そしてその横には、見たこともない和服の年配の女性もいる。
「あの婆さんが、白澤家の人………なのかな。なんか、彦馬の爺さんと張るような感じじゃね?怖そー」
 シンケングリーンは変身を解除すると、首の後ろをぽりぽりと掻いた。
「でも、挨拶くらいはしといた方がいいのかなー。ここらへん、俺たち、すっげーぶち壊しちまったもんなー」
 千明は周囲を見回す。かつての小道を元通りにするのには、それなりのお金が掛かるだろう。白澤家は大財閥だと、花見の時に彦馬から聞いた。千明でも聞いたことがあるくらいの財閥なのだから、確かにそうなのだろう。そうすると修理費など、どうということはないのかも知れないが、それでも、心証を良くしておくに越したことはない。
「志葉家のためにも!ってことだよな。丈瑠が、戦闘の前にちゃんと説明できてりゃいいけど。まあ、無理っしょ」
 でも、見たところ、あのような雰囲気の人間は苦手だ。千明はそう思う。
「でも………彦馬の爺さんも、付き合えばいい奴だったし」
 千明はそう言うと、天澄寺に向かって走り出した。



 


 大変化させた獅子折神のコクピットに着いたシンケンレッドは、シンケンマルを操縦桿にして、獅子折神を操る。
 まずはアヤカシの状況を確認するために、アヤカシの周辺を飛んでみた。アヤカシの意識が、丘の上の本体に戻って来たのは、まちがいないようだった。枝や触手が、激しく動いている。しかし、その動きがなんとなく、ちぐはぐな気が、丈瑠にはした。
「先ほどまでと違う?」
 どちらにしろ、空中を飛んで攻撃するには、高度がぎりぎりだった。丈瑠はまず、獅子の形状で攻撃を仕掛けることにした。獅子折神を丘の上に下ろし、その状態でアヤカシに攻撃を仕掛けようとした時だった。
「覚悟しろ!シンケンレッド!!」
 いきなり、アヤカシが、枝や触手を巨大化して伸ばしてきた。
「しまった!!」
 避けようとするが、近くに天澄寺があることもあって、自在には動けない。それが災いして、獅子折神はアヤカシの枝と触手にぐるぐる巻きにされてしまう。先ほど襲ってきた根と同様に、太さが軽く1〜2mはある枝や触手だ。
「はっー!」
 モヂカラを注入して、折神に巻きついている枝や触手を振りきろうとするが、駄目だった。
「無駄だ!無駄だ!この俺様の力を思い知れ!」
 まさか枝や触手が、ここまで力を持っているとはシンケンレッドは思ってはいなかった。油断したということだろうか。
「大火炎!!」
 獅子形状のまま、炎を発してみる。折神に密着している触手は燃えるものの、次々と新しい枝や触手が、上から上から巻きついてくるために、やはり少しも動くことができない。
「どうだ!これが枝垂れ桜から吸収させてもらった力だ!」
 アヤカシが得意そうに叫ぶ。
「枝垂れ桜………の一千年の霊力」
 が効いているのだろうか。しかし、ここまでとは、さすがに予想できていなかった。

 アヤカシの横で、触手にぐるぐる巻きにされて、身動きとれない獅子折神。そもそも獅子折神だけでは、それほど攻撃方法に種類はない。身動きとれない状態では、何もできないに等しかった。
「どうにか、動けないか!?」
 シンケンレッドは必死でモヂカラを出す。しかし、どんどん巻きついてくる触手に、ついに本当に動けなくなってしまった。その上、獅子折神の動きが止まるとみるや、触手は、今度はものすごい力で、獅子折神を縛り上げてきた。
「志葉の当主!貴様も、これまでだ!!」
 アヤカシが言う通り、さすがの獅子折神もぎしぎしと不気味な音を立てて軋み始めた。
 シンケンレッドのいるコックピットの中もその軋みのために、四隅が変形を始める。それでも丈瑠は、シンケンマルにモヂカラを注ぎ込む。獅子折神は必死で動こうとするが、本当にびくともしなくなってしまう。
 シンケンレッドは、真っ直ぐ前を見据えた。

 どうしよう

 シンケンレッドの頭の中に浮かぶ文字。
 先ほどアヤカシ本体の傍にへたり込んでいた時は、その文字が頭に浮かんでも、力尽きていたため、何も考えていないに等しかった。しかし今。何故か体力もモヂカラも回復しているが、あの時と同様に、何も案は浮かんでこない。
 シンケンレッドは心の中で、自分を嘲笑した。

 これだけの道具立てがあっても………俺は………

 知らずと、ため息が漏れる。
 シンケンレッドはシンケンマルの柄頭に手を置いたまま、そこに俯いた。
 この窮状から逃れる方策を考えようとするのに、脳裏に浮かぶのは、彦馬の哀しそうな顔と、黒子の心配そうな仕草ばかりだ。

 こんなところで、諦めるわけにはいかない。
 投げ出すわけにもいかない。
 勝って帰らないと、みんなが困る………
 それは、わかっている。
 わかってはいるが、でも、どうしたらいいのか。

 頭の中が真っ白とは、こういうことか。シンケンレッドの心境はそれに近かった。
「………何か、何かあるはずだ。ここから抜ける方法が………」
 マスクの下で歯をぎりっと噛みしめた、その時。ふと、シンケンレッドの頭に浮かんだのは、何故か、流ノ介と千明の笑顔だった。流ノ介の控えめな笑顔。そして、千明のはにかんだ笑顔。どちらもその瞳は、真っ直ぐに、こちらを見ていた。
「流ノ介だったら………こんな時、どんな案を………出してくるのか」
 シンケンレッドは呟く。

 思い出したのは、脂目マンプクと闘った時のことだ。
 ナナシに化けるなどと言う馬鹿な作戦は、流ノ介とことはでなければ、思いつかなかっただろう。いや。例え、思いついても、丈瑠なら口にできない。それを流ノ介は平然と口にする。それは自分に自信があるからだろう。
 流ノ介は失敗も多いが、それは、それだけいろいろな試みをしているからだと、丈瑠は思っていた。そして失敗しても、流ノ介は真摯に反省し、それを必ず次に活かす。同じ失敗は二度としない。だから、みるみる成長して行く。
「千明だって………あいつは頭の回転が速いから………」
 シンケンジャーになったその日から、彦馬に毎日のように叱られていた千明。
 しかしそれは、それだけ自分自身の意見、やり方、というものを持っていたからだ。千明と彦馬のやり取りを見ていて、丈瑠はそれを痛感した。何故なら、丈瑠は、ただ彦馬の言うなりに育ってきたからだ。モヂカラ稽古のために、五百文字書けと言われれば、丈瑠は何の疑問も持たずに、五百文字を書いた。それで真夜中になろうとも、やらないで済ませるということなど、考えつきもしなかった。
 さらに千明は、自分より遥かに上の実力の者とも、平気で対抗しようとする。だから、頭を使う。丈瑠だったら決して立ち向かわないような相手にも、立ち向かい、そして、いつでもなんとかしてしまうのだ。
 この一年で一番成長したのは千明だろう。それは、剣もモヂカラも、だ。侍の心得に関してだけは、よくわからない。しかし彦馬はそれを、今でも嬉しそうに話す。
『千明は頭が良い。筋が良い。そして運も良い。将来、どのような侍になるか。楽しみですな』
 自分の手元に来てから急成長を遂げた千明。そんな千明が、彦馬はかわいくて仕方ないのだろう。彦馬からこの言葉を聞く度になんとも複雑な気分になるが、その事実については、丈瑠も認めない訳にはいかない。

「俺が、流ノ介や千明だったら、爺はもっと楽に俺を育てられたんだろうな………」
 侍たちと暮らした一年間に、何度、思ったことだろう。それが、侍の血を引いた彼らと、そうでない自分の違いに思えて仕方なかった。しかし今、彼らとの本当の相違点はそんなことではないのかも知れないと、丈瑠は思う。

 そこまで考えて、シンケンレッドは頭を振る。そして、そのような思考を頭から追い出した。
「今、俺にできることをしないと!」
 シンケンレッドは、とにかく、このアヤカシの触手から逃れる方法が何かないかを考える。
 相変わらず、触手は獅子折神を締めつけてきているようで、そこら中が、みしみしと壊れそうな音を立てている。考えている時間もそうない。このままでは、もうすぐ獅子折神は壊れてしまうだろう。
「俺だって、いつも、そっと扱っているのに」
 丈瑠が獅子折神を扱う時は、まるで小さな猫か何かを扱うかのように、いつも優しく丁寧に………
 そこでシンケンレッドは、はっとした。
「折神大変化を解除する?」
 そうすれば、折神は小さくなり触手から抜けられる。触手の届かない場所まで飛んでから、すぐにまた大変化を行い、そのまま上空から五角大火炎で突っ込んだらどうだろうか。突っ込む時に、また触手が邪魔をするだろうが、上空から猛スピードで突っ込めば、そうそう簡単には触手に捕まらないだろう。
 問題は、大変化を解除し、再び大変化させるまでの間、シンケンレッドがどこにいるか、だ。その間に、触手に捕まらずにいられるだろうか。

「でも、やるしかない!」
 シンケンレッドはそう言うと、シンケンマルを操縦席から引き抜こうとした。
 その時だった。
「うぎゃ?」
 アヤカシが奇妙な声を上げた。それと共に、たった今まで、みしみしといっていた音がしなくなった。
「あ、ああああ??そ、そんな馬鹿な!?」
 アヤカシが叫ぶ。シンケンレッドが外を見ると、枝も触手も、獅子折神から解けて、アヤカシ本体の方へと戻って行く。
「………えっ?どうして………」
 そして気付く。アヤカシ本体から少し離れた場所に、シンケンブルーの姿が見えた。その手には、モウギュウバズーカがあった。
「流ノ介が、モウギュウバズーカで?」
 アヤカシの本体を攻撃したのか?そのダメージで、獅子折神への攻撃が止んだ?
「………しかし、アヤカシにモウギュウバズーカは効かなかったはずでは………!?」
 シンケンレッドの中に、疑問が渦巻く。しかし、この時を逃す手はなかった。シンケンレッドは、獅子折神を空中に飛び上がらせる。
「あ!待て!!あ?」
 アヤカシの触手が、獅子折神を追おうとするが、何故か触手は伸びなかった。
 獅子折神はアヤカシから一旦離れて、アヤカシの上で数回、旋回した。シンケンレッドは、シンケンブルーがアヤカシから充分に離れたことを確認してから
「五角大火炎」
 と叫んだ。シンケンレッドがモヂカラを発動すると、飛行体形状になっている獅子折神が炎に包まれた。そのまま、一直線にアヤカシに向かった。
「これで終わりだ」
 火炎を纏った獅子折神は、アヤカシの中央を貫いた。
「ぎゃあぁぁぁぁぁ」
 アヤカシは絶叫と共に、炎に包まれる。巨大なアヤカシの本体は、それでもまだ形を成していた。
「しぶとい!!」
 丈瑠は、旋回して戻って来た獅子折神を、再び、五角大火炎でアヤカシに突っ込ませる。
「ぐわぉぉーーーーー」
 それで最後になった。アヤカシは、天まで焦がすかと思えるほどの業火の中に、消えて行った。二の目はなかった。
 シンケンレッドは、獅子折神の中で、ほっと息をついた。
「これにて一件落着………」
 独りで言ってみるが、微妙に虚しかった。

















小説  次話







2010.06.23